昨日の晩から胸騒ぎが止まりません!
満月だというのに。
あの子の気配が、一瞬、 確かに、 この世から消えた………ッ!
駄目………駄目だ、涼………ッ! あなたは、何か、間違った方向に、 まっしぐらに突き進んでいる! そちらにだけは、けして、 行ってはならない。
そんな方向へ、間違いなく、飛び込んでいる!
幸い、すぐに何かがあなたを呼び戻しましたね。 あの………手には、見覚えがある気がする。 あの手………では、「彼」があなたの側にいるの?
………あぁ、本当に、訳がわからない。
わからないのに、どうして、 こんなに気持ちが千々に乱れるんだろう。
それと気付いて、 すぐに零れた豆を集めるように一所に心を纏めるのに、
知らぬうち、自分で、それをまた、 思い切り部屋中にばらまいているんだ。
涼………ッ。
あなたの声を聞かせて。 ただ一言だけでいい。
約束をして。 イイエ、約束でなくてもいい。 いつもの、あの弾けるような笑い声で。 「大好き」とあなたに言われるとき。 私は、自分の体が、確かにこの世で、骨の周りにちゃんと集まり、 固まって、血を通し、生きて、動いている事を知るんだよ。
そうでなければ……… あなたがいない世界では………
私は存在などしても、しなくても、 なんら、変わりはしない。 永遠に小石のように、道ばたにころがっているのと変わらない!
………もぅ、いてもたってもおられない心地だ。 今日のような事が、二度、三度続くようなら、 ………あなたがここにではなく、 「世界」に戻らぬ、「その日」が。
私がここ数ヶ月、ずっと……… 感じてきた予感が。 現実のものになるとでも………ッ?
イイエ。 イイエ、イイエ! あの子が、あの子にかぎって……… 有り得ない、そのようなこと! あの子が自ら死を選ぶなんてこと、 有り得るはずがないッ!
ねぇ。 ねぇ、そうでしょう? 涼………ッ!
あなたは、本来、この私のためのもの。 十文字鷹のために生まれた子なのだから。 誰にも、私から奪ったりなど、できはしないはずだよ。
………涼………ッ。
老翁さまからあなたをまがりなりにも取り戻したように。 あなたのためならば、私は、何を過とうと、怖くないんだ!
だから、どうか。 この先に何があっても。 けして。
けして、早まったことだけはしないと誓っておくれ………ッ。 どうか。どうか、お願いだから………ッ!
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